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健康。それは万人の願いである。
むろん、我ら探険隊メンバーも例外ではない…
ある日、I隊長がおもむろに取り出したパンフレットには、「日帰り人間ドック」の文字が大きく載っていた。
愛煙家のT隊員、隊員候補生のO君の方を見ると、2人ともあわてて目をそらした。
人間ドック=医師の生活指導、といった図式が浮かんだのであろうか。
受けたほうがいいのにね〜、と顔を見合わせつつ、I隊長とC隊員は、中土佐町の隣り、S市のK病院へと向かった。(なお、内容上、お食事中の方は食事を済ませてからお読みください)
と、その前に、人間ドックを受ける際にあらかじめ必要な事項から…
(注:あくまで今回探険隊が受診したK病院の日帰りコースの場合です)
・3ページにわたる問診票に記入(自覚症状、生活習慣、既往症の有無、他)
・前の日と当日の○○("大"の方)を採る
・前日夜9時以降は飲食禁止
つまり、前々日から既に、受診の緊張感をもって生活しなければならないわけである。
この心理状態が、検査に影響しないものだろうかとちょっと心配な隊員たちに、ついに運命の日が訪れた…
いざ出陣
ドック受診当日…
K病院1階受付に集合した隊員2名が、案内されたエレベーターで4階の健診センターに上がると、カッコいい白衣姿の看護士さん方(女性)が丁重に応対してくださった。
提出物を出して、内容を軽くチェックしてもらい、カゴに入った着替えと名札を持ってロッカーへ。
前合わせの、あの浴衣のような病院用着物かと思いきや、スポーティなジャージとTシャツだったのでちょっと意外であった。隊員2名、同じ水色のジャージに着替えて順番を待つ。
この日の午前中は、探険隊を入れて6名の受診者が集まっていた。
以下、I隊長の受診順にレポートいたします(各人によって若干順序が異なりました)。
その1 血圧測定
まずはウォーミングアップ(?)の血圧測定。と思いきや、何故か血圧計が突如故障し、待たされるI隊長。機械で測れないような凄い血圧なのかと思ったが、単にたまたま機械の調子が悪くなっただけのようであった。
一気に脈拍が上がってしまったI隊長の運命やいかに…
その2 採血
いつも決まって「チクッとしますよ〜」と言われるが、「チクッ」よりもっと痛いんじゃないだろうかといつも思ってしまう採血。
ここでI隊長を2度目の試練が襲った。
採血を終えた隊長の腕に、痛々しい刺し跡が何故か3箇所も…
聞けば、「見えない血管を探すのが得意」だという看護士さんの出馬により、チャレンジ3度目にしてめでたく採血成功と相成ったとのこと。
ガーゼを貼られたその両腕を見ていると、何となく自分も痛みを覚え始めたC隊員であった。
※K病院の他の看護士さんの名誉のために申し添えておきますと、I隊長は普段から血管が見えにくいタイプなのだそうであります
その3 採○(“小”の方)
紙コップさん、ごめんなさい。
その4 身体測定
気を取り直して、身長、体重、視力(眼圧測定含む)、聴力を測定。
ここで驚愕の新事実が明らかに… 十数年来、変わっていないと信じ込んでいた己の身長が、ここでの測定の結果約3cm高かったことが判明したC隊員。
背伸びをしていたんだろうとI隊長は冷ややかであったが…?
その5 心電図
検査室に移動。台の上にヨコになり、体のアチコチに大きめのエレキバンのようなものをくっつけられる。
(今、心電図をとられているんだ…)と思うと、妙に平静ではいられないように思えてくる。
思えば、人間ドックに来ているという状況が既に非日常であるのだから、検査の結果にも「緊張の度合い」が数値として表れるのではないだろうか、と考えているうちにあっという間に検査終了。
不整脈が発見されないかとヒヤヒヤしながら次の検査を待つ。
その6 腹部エコー検査
心電図と同じく、ヨコになりお腹を出して検査。
ゼリー状の物質を塗った腹部の上を、検査器具を滑らせながら医師の先生が話し掛ける「深呼吸して〜」「リラックスして〜」との言葉に従って、腹部に空気を入れたり弛緩させたりしなければならない。
しかし「息を吸って〜」の次がやはり「深呼吸して〜」だったりすることがしばしばあり、息を吐くタイミングを逃して目を白黒させた隊員2名であった(息の吸い過ぎには注意しましょう)。
その7 眼科健診
身体測定の際に視力は測ったのであるが、より詳しい検査のためか1階の眼科へゾロゾロと誘導される受診者。
一般の受診者の人々に混じって眼科の先生の診察を受ける。
ここで又もやC隊員を襲う驚愕の事態… 先生「眼圧の結果がギリギリだったので、もう一度診せて下さいね」 C隊員「…!?」
確かに視力にはここ数年まるで自信のないC隊員であるが、まさかここで再検査とは… 恐怖におびえるC隊員の目玉に、先生は何やらシビレ薬と称する青い液体を一滴流しいれた。
あらゆるマイナス思考の空想に浸る間もなく、テキパキと検査を終えた先生の「ハイ、大丈夫です。問題ありません」という声に我にかえるC隊員。カルテを渡され、呆然と再びエレベーターに乗ったのであった。
思い返せば最初の眼圧検査の時、開けた目にプシュッと空気が3度当たるのであるが、臆病者のC隊員は見事にほぼ3回とも目をつむってしまっていたのであった。
皆さん、眼圧検査に備えて、日頃からめったなことでは目をつぶらない訓練をしておきましょう。
その8 胸部レントゲン
これは皆さんおなじみだと思いますので… よく検診で普通にレントゲンと言ったら、この胸部レントゲンを指すわけですね。
その9 胃透視
人間ドック初心者の、最大にして“最恐”の難所。
経験者達は語るのである。「バリウムだけは、飲みたくない」「あれを飲むんだったら、胃カメラの方がまだましだ」…
気のせいか、先の検査終了後、バリウム待ちの時間がやけに長く感じられる。
休憩所でソワソワと向こうの方を見ていると、検査室から、先に検査の終わった人が出てくるのである。
ある男性は、いかにも苦しげにお腹をさすりつつつぶやいた。「何回飲んでも、バリウムはまずい」… ドックの常連をしてまずいと言わしめるバリウムとは一体…
検査室から、白衣にマスクの医師が顔をのぞかせた。ついにC隊員が名前を呼ばれたのである。C隊員の後、ややあって、I隊長。2人の壮絶なバリウム体験とは…
バリウムさん いらっしゃい
検査室に入って、上着を脱ぐ。バリウムに備えて気合を入れるあなたに、先生はまず、ごく小さな2つの物体を手渡し、これを飲んでください、とおっしゃるのである。
一つは、透明な液体の入ったプラスチックの容器。よく喫茶店でアイスコーヒーに付いてくる、あの液体シロップにそっくりである。
もう一つは、高さ4〜5cm程の、試験管のようなこれまたプラスチックの容器で、その3分の一程の深さまで、白い小さなつぶつぶが入っている。
なぁんだ、こんなラムネみたいなものをみんな怖がっていたのか、馬鹿馬鹿しい… そしてつぶつぶを口に放り込み、透明な液体で軽く流し込もうとして…あなたの目は点になる。
ラムネに見えたのは発泡剤である。胃を急激に、そして確実に膨らませる役目を担う、小さいけれど強力なスナイパーである。
量からは想像もつかない発泡力?に目を白黒させ、たちまち心の平静をうしなった目の前に、「次はこれを」と、ついに真打登場。そう。これがかの有名なバリウム様である。
500mlの、良く言えばヨーグルトシェイク、見方によっては液体状の石膏あるいはセメント。
こっ、これを一気に飲むんですか?と、わかっていてもやはり叫ばずにはいられない非常識な量…ではあったが、K病院の先生は飲み方については特に何もおっしゃらなかった。
とりあえず、覚悟を決めて口に入れてみる。かすかな酸味を感じる。思ったより飲みやすい。これなら、どこぞのファストフード店でハンバーガーの横に付いてきても、気付かず飲んでしまうのではないだろうか。
ぐいぐい飲んでしまおうと思っていると、先生が慌しく操作室に入るのが見えた。まだ半分ぐらいしか飲んでないのだが… そして、そのまま撮影が始まった。
先ほど身体測定で身長を測るために乗ったような台の上で、まな板の上の鯉のような心境になる。 前にせり出した機械の一部に窪んだ箇所がある。急いで全て飲み干し、空になった容器をそこへ入れた。
苦しい。発泡剤とバリウム、どちらか一つなら耐えられるであろうと思われるのだが、双方が相まって、変てこな満腹感を演出し、物理的にはお腹いっぱいなのであるが、全然幸せな満腹感ではない。
はっきり言って「気持ち悪い」その状態で、操作室の先生から矢継ぎ早に指示が飛ぶ。「はい、右を向いて」「今度は左」…
胃の中にバリウムが残っているのはわずか5分の間なのだという。その間に撮影してしまわなくてはならないので、先の検査の時までは穏やかだった先生の口調が、今回はかなり忙しい。
指示どおり、台にへばりついてあっちを向き、こっちを向き、時に台を後へ倒されて仰向けになりながら、まるで忍者屋敷のくの一のように素早く体を反転させねばならない。
「ちょっとだけ右」「もうちょっと」「ストップ!」「斜め向いて(どっちの斜めですか?)」「左…右!(だから、どっちなんだぁ)」
最後には何が何だかわからなくなりながらも、必死に頑張った。とどめに謎のあんま器のようなもので腹部をぐいぐい押される。ぐえ。
へろへろになったところで、ようやく撮影終了。
操作室から出てきた先生に、ピンクならぬ緑の小粒を2つ渡され、飲むように言われる。それがこの後のとんでもない事態を引き起こすとも知らずに…
ともかく、阿鼻叫喚の数分間を乗り越えた隊員たちは、どうにかレントゲン室脱出を果たしたのであった。
その10 医師による所見
着替えの後、別の医師の先生による所見で全行程終了。
I隊長…特に異常なし
C隊員…尿検査にある種の反応と、食道に謎の丸い影が見つかる。ほぼ間違いなく、気泡だろうということであったが、念のため胃カメラを…と言われ再び心穏やかでなくなるC隊員。(結局、この日胃カメラは飲みませんでした)
最後の試練
丸々15時間、何も口に入れていない隊員たちに、この日初めて笑顔が見られた。朝食のサービスである。
時間的には既に昼食といっても良い感じであったが、用意された和風モーニングをパクつくC隊員の横で、I隊長は何故か食が進まない。
気持ち悪さが収まらないI隊長は、バターがこってりと塗られた食パンが喉を通らないようであった。気の毒に思いつつも、そのパンをちょっと横目で見るC隊員。しかし結局自分のお膳だけを平らげ、最後にオレンジジュースを飲んだ。
一方のI隊長は、サラダなどあっさりしたものに箸をつけるにとどまった。ここでの食事の摂り方が、後の両者の明暗?を分けたのであった…
全ての日程を消化し、ごはんも消化した探険隊は、看護士さんたちにお礼を言い、料金の支払いのため1階に下りた。
異変は、受付の精算所へ向かう廊下で起きた。「……!」 C隊員の顔色が、みるみる青くなってきた。実は、レントゲン室を出て休憩している時すでに、ある不安を感じていたのである。
モーニングを食べ終わった頃、その不安はかなり大きくなっていた。もうちょっと我慢できるかな…と思いながら歩いていたのであるが、その時は急激に訪れた。
支払をしようと財布を出したI隊長への挨拶もそこそこに、C隊員は廊下の彼方へと足早に消え去った。そして翌日の朝出社するまで、2人が顔を合わすことはついになかったのである…
これ以上の詳しい報告は、あえて控えさせていただくが、I隊長に遅れること十数分後、どうにか帰路についたC隊員は、約30分の道中、再び危機に襲われ、某町の駅に駆け込んだのであった。帰宅が大幅に遅れたのは言うまでもない…
片や、I隊長にはそうした急激な変化は訪れなかったが、帰宅し夕食を摂った後、たちまち先刻のC隊員と同様の危機に見舞われ、自宅の一角から暫く動けなくなった。そして、夕方には心身ともにほぼ落ち着いたC隊員に対して、I隊長の危機的状況は翌日まで尾を引いたのであった。
以上から、我々探険隊は以下のような教訓を得た。
一、 検査後バリウムをすみやかに体外へ排出する必要性を考えると、ドック終了後の食事は、喉を通り易いもの(ごはん、味噌汁など)を選び、なるべく残さず食べるほうが良い。
一、 その食事の際、水分を多く取ると当然ながら胃腸内容物の流動化が早く進む。したがって、落ち着ける環境にたどり着けるまでの時間を考慮し、どの時点で危機的状況が訪れれば良いのか(早い話が、いつ頃下剤が効けば良いか)あらかじめ調整することが望ましい。
一、 ふだんお腹がゆるいなど、体質の個人差も念頭に入れるべきである。
一、 いずれにせよ、半日ドックの場合も休暇は一日分取ることをお勧めする。
**お食事中の方、大変失礼致しました**
【検査結果報告】
血液成分など各検査の数値と、一般的な数値(標準値)とが並んで記録されており、AからGまでの7段階評価がつけられている。
おおむねA判定であったが、I隊長は1項目、C隊員は2項目においてB判定(再検査が望ましい)とされた。
いつも元気いっぱい、問題なしとおっしゃる方も、一度は健診を受けられて、自身の体の傾向を知ることでなお一層、健康な体づくりを目指されることを切にお勧めする次第であります。(今回は真面目な締めくくりだ…)
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