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Vol.11 探険隊、大正町市場を歩くの巻

探検日 H.15.12.13 AM12:00〜13:30

大正町市場、マル秘リニューアル

大正町市場。久礼(くれ)の台所であり、観光の目玉の一つでもあるこの市場に、ある異変が起きているとの情報を得たわれわれ探険隊は、万全の装備を整え、現地に向かった。
 久礼八幡宮の近く、久礼の中心地にある商店街の、そのまた中心にある大正町市場は、33年の歴史を持つアーケードの下で、漁師のおかみさんが魚を売る昔ながらの市場である。

燦然(さんぜん)と輝く「久礼大正町市場」
大正町西入口

 これまでに、もう何度も前を通り、中にも幾度となく入った筈の探険隊メンバー2名は、いつものように同じ道を通ってアーケード入り口までやって来た。そして、何気なく上を見上げた途端… アッと驚きの声を上げて立ちすくんだ。思いもかけぬものが、目の前に立ちはだかっていた。

 いつも見慣れた、あのくすんだ色のトタン屋根のアーケード。それが、小ぎれいな木造のアーケードに変貌していた。そして、入り口に燦然(さんぜん)と輝く「久礼大正町市場」と書かれた看板。そう、文字通り、輝いているのである。正確に言うと、後光が差しているような、いわゆる「ピカーッ!」というような表現をもって、旭日光が描いてあるのである。
後光を背負っているのは、久礼のシンボルである丸々と太ったカツオ。むろん、本物ではない。本物であれば、当地にたくさんいる猫たちが放っておかないであろう。しかし、そのカツオ看板は、まるで本物のような質感をもって買い物客に訴えかけてくる。
「まぁ、ちっくと寄っていきや〜」 …そう言ってカツオがウインクしたような気がして、探検隊は吸い込まれるようにアーケードへと足を踏み入れた。

探険隊、決死の潜入調査

とにかく明るくなった大正町アーケード商店街
アーケード商店街

 中に入ってみると、従来のアーケード商店街のイメージが完全に払拭された。明るい。とにかく明るい。天井から差し込む太陽の光と、無数にブラ下がる電球に照らされたアーケード内を、探検隊はなぜか落ち着かない様子で歩く。
それは、「探検」という名目からはやや遠い、清く正しい健全さのようなものへの戸惑いがそうさせていたのであり、決して前日の忘年会で二日酔いの頭に昼間の光がまぶしかったわけではありません… 
 しかし、様変わりしたとはいえ、この商店街の魅力を語るキーワードは、少しも失われてはいなかった。懐かしさ、レトロ感、暖かみ…
 通りを照らす照明は、裸電球にブリキの傘をかぶせたものである。店先にはガラス球を網で結わえた浮きが飾ってあり、木造アーケードの入り口には昔懐かしい丸型ポストまで備え付けてある。それらの舞台装置は、わざとらしさを感じさせない程度に程よく、主役たちを演出するのに申し分のない賑やかさでアーケード内に趣をそえている。

両側には、旬の魚や野菜を並べた店が並ぶ。とりわけ、魚が多いのは言うまでもない。まぶしい明かりの下で、魚たちはやや照れたように、しかしその鮮度をお客にアピールすべくウロコをまんべんなく光らせて横たわっている。
いや、正確に言うとアピールしているのは店のおばちゃんである。陽気な笑顔から繰り出される威勢のいい掛け声に、観光客が思わず足を止める風景も、以前と何ら変るところはない。
「買うていかんかえ〜」「おいしいよー、このタコも」
探検隊も、使命を忘れて思わず立ち止まりそうになるが、ぐっとこらえて足を前へと踏み出す。
とりあえず、店のおばちゃんには「ええ、また後で」などと愛想笑いをしながら、しかし試食の干しダコにかなり後ろ髪を引かれつつ、先へと進むのであった。

ハマのめし屋で撃沈…!?探検隊、懐中の危機

市場のめしや 浜ちゃん魚屋のおばちゃんの買わんかえ攻撃をかわしつつ歩いていた探検隊は、ふと一軒の店の前で立ち止まった。
「市場のめし屋 浜ちゃん」と、看板にある。
店の表で慣れた手つきで干物を焼いているのが、どうやら店主の「浜ちゃん」であるらしい。コワモテの漁師のおっちゃんかと思いきや、いらっしゃい、となかなか愛想が良い。つられて近寄っていく隊員たち。
店の中を覗くと、細長いテーブルが2つ並べられ、10人ほど入るといっぱいになってしまうほどのこじんまりとした店内には、既に何組かのお客が座って思い思いのメニューに舌鼓を打っていた。
待つこと数分、やがて奥のテーブルが空き、我々は店内に潜入したのであった。真新しい木の香りが心地よい。
 メニューはいたってシンプル、かつおどんぶり、干物定食、タタキ定食に、めし、汁、その他単品の中からかつおどんぶりを注文する。

 待つ間、やはり気になるのは隣席のお客が味わっているお膳の上である。
 隣りの芝生は何とやらで、人様の召し上がっているものがおいしそうに見えるなどというはしたない理由では決してなく、あくまで探検隊の使命に忠実なるがゆえに… C隊員は、観光客とおぼしき紳士が今まさにかぶりついている干物を横目で眺めた。アジのようである。むろん、「浜ちゃん」が店の前の七輪で手ずからパタパタと焼いて運んで来られたものである。
浜ちゃん自慢の「かつおどんぶり」550円漂ってくる焼きたての干物の香りに、思わず口が開きそうになるその間抜け顔を、I 隊長が呆れて見ていたことは言うまでもない。
ややあって、注文のかつおどんぶりが運ばれてきた。味については、今さら何も申し上げることはございません。たっぷりのご飯の上に、鮮やかな色のカツオの身が美しく並び、その上から真っ白なトロロがかけられたカツオドンブリを、探険の使命も忘れて頬張る隊員2名。新鮮なカツオの刺身は、甘味があってとろけるような食感である。

夢中で食べていると、先程のアジ干物のお客と反対側に別のカップルが座った。男性の方が「カマスの干物」とオーダーするのを聞き、どんぶりに顔を埋めながら性懲りもなくそちらを盗み見ようとしたC隊員の視線が、ある一点に留まった。
流しとレジのある方の壁に貼ってある、メニューと同じ書体で墨書きされた半紙……豪快かつ洒脱な筆跡から察するに、町の名士・K氏の筆らしかった……そこには、こう書かれてあった。
「久礼久礼くれくれ言うけんど、ちったおまんも金出しや」
思わず座布団5枚!と叫びたくなるような名文句に、普通の客なら笑ったり感心したりするところであろうが、スネに傷持つC隊員、口の中のカツオの切れ端を慌てて飲み込み、うつむいたのであった。この年末、薄い財布の中身はいつにも増して乏しかった… 
その後、窮状を察して、カツオどんぶりの代金550円をカンパしてくれたI 隊長を、思わず拝んでしまったことは言うまでもない。

大正町市場よ永遠なれ

昼どれの天然ハマチは、生きていました。
新鮮な天然ハマチを買い求めるお客
ぶり・太刀魚・ぐれ などなど今が旬の魚が並びます。

朝どれ・昼どれの魚ばかりが店先に並びます。

満腹のお腹を休めがてら、再び歩き始めた探険隊は、色とりどりの小間物を見つけ足を止めた。「浜ちゃん」の隣の呉服店の店先には、年の瀬にふさわしく門松、羽子板、おせち料理が並び…
ん?ちょっと待て、何故に呉服店にそんなものがとおっしゃる方、むろんそれらは本物ではありません。ちりめんや絣(かすり)といった着物の端切れを縫い合わせて作ったミニチュアのお飾りに、女性客は必ず目を引かれるのであります。
小物好きのI 隊長も、羽根突きの羽根をあしらったお正月飾りにいたく心を奪われたようであった。あれやこれやと品定めをし、歩き回るうちに他の物にも目がいって、ああこれだからショッピングはやめられないのよ、となぜか突如ハイテンションになるI 隊長。
隣りの干物まで気になる「いやしい系」の某隊員はさておき、こちらは正にご婦人向けの癒し系空間である。

午後1時を過ぎ、魚屋のおばちゃんたちもさらに活気づいてきた。
この時間になると、売り物の魚がほぼ出揃うのである。
お昼をI 隊長におごってもらって少し元気の出たC隊員、今夜のおかずにウルメの一日(ひいとい)干しを手に入れるべく、ターゲットの絞込みにかかった。何軒か見て回った結果、I 隊長の顔見知りのおばちゃんの店に決めた。
何匹か皿に乗せられた、丸々と太ったウルメは、脂がのっていかにもおいしそうである。こういう状態の魚を、店の人たちは「ぶく」と呼んでいる。
「おばちゃんみたいに丸々肥えておいしいでぇ」
はぁ、そうですね、いや、そんなことは、でもおいしそうですほんと、と、意味不明な返事でごまかしつつ、いくつかの皿を吟味。ここで臆することなく、先刻の「ちったおまんも…」のような、気のきいたフレーズを使った掛け合いができるようになれば、より買い物が楽しくなるであろう。その点ではまだまだ修行中の身なのであった。
買い物、いや探検を終えてアーケードを出る我々に、カツオの看板が「またきぃや〜」と手を(ヒレを?)振っているような気がした。

帰り道、久礼八幡宮の横を通ると、先程並べて売っていたような大きさのウルメが、大量に網の上で干されているのを発見。透き通った冬の日差しをあびて、鮮やかな青色を残したまま、おいしい干物になるのを待つのであろう。
周りに張り巡らされている猫よけのネットに、大きな穴が空いているのに苦笑。鳥居の脇でにらみをきかせている狛犬も、この穴には気付いていないようであった。
人も猫も、同じように海の恵みにあずかる漁師町の、ぬくもりを感じる小さな商店街は、今年も賑やかに久礼、いや、暮れていくのであった…(C隊員)


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